BMW S 1000 RR
S 1000 RRが市場に投入された2009年。それは衝撃ともいえるインパクトをマーケットに与えた。しかし市販車最速を競うスーパーバイクレースのベースマシン開発はBMW Motorradにとっても大きなチャレンジであったはずである。独創性高いマシンを多くラインナップするMotorradであるが、S 1000 RRは、並列4気筒エンジンをアルミ製ツインスパーフレームに搭載。サスペンションシステムもテレスコピックフォークを装着するなど、オーソドックスともいえるレイアウトを採用し、ライバルと同じ土俵で戦う意志を強く感じさせた。
しかし、その完成度の高さは想像以上のものであり、瞬く間にマーケットをリードするベンチマークとなったのである。
マークの厳しくなった状況のなか登場した新型。
これまで、基本的にデビュー時の姿を大きく崩さず熟成を重ねてきたRRであるが、現行モデルは全てを刷新して登場。
よりスリムかつコンパクトなボディであるが、小柄なライダーはもちろん、大柄なライダーにも窮屈さのない自由度の高いライディングポジション。
新たに採用されたフレックスフレームは解析度の進んだ剛性コントロールにより、旋回性とともに接地感もより高まっている。同時にフルフロータータイプのリヤサスペンションはフリクションのない動きの良さを持ち、リヤタイヤの存在をより強く感じることが出来る。
S 1000 RRのボディ
軽量かつコンパクトなエンジンは逆回転クランクシャフトを採用。加速中のウィリーを低減。また、ジャイロを打ち消すことで軽快なハンドリングを得ることが狙いである。
引き上げられた最高出力は、レースでアドバンテージを得るためには、より高回転域でのパワフルさが求められる。
一方、高回転域でのパワーを求めると不足しがちとなるのが低回転域のトルクである。
どちらもおろそかに出来ないのがストリートマシンの難しいところでもあるが、その難題をクリアするべく採用されたテクノロジーがBMWシフトカムである。
低回転域でのコントローラブルでトルクフルなキャラクター。そして高回転での胸のすくような加速力とパワフルさを両立。
9000rpmを境に。あるいはコンピューターが必要と判断した際にカム山が切り替わるが、そのタイミングを感じることが出来ないほどシームレスでスムーズな吹け上がりを獲得している。
6軸IMUの採用により、電子制御のアシストがより高度で繊細に、自然になっている。
そして、その恩恵は腕に覚えのあるライダーだけでなく、あらゆるレベルのライダーが享受できるものだ。
4つのライディングモードに加え、Mパッケージではプラス3つのモードを装備。さらにより細かい設定を任意で行なうことも可能で、レベルだけでなく望む走りに向けたセットアップが可能とあらゆる要求に応えてくれる。
一方、RRが得意としていたのはサーキットの中だけでない。
ストリートでの走りを疎かにしていないのはシフトカムの採用ということだけではなく、車体のしなやかさやサスペンションの動きの良さ。
ツーリングシーンではもちろん、ハイパワースポーツマシンではあまり得意とはいえないウェットコンディションでの驚くほどの乗りやすさも獲得している。
サスペンションはライディングモードと連動して。また、任意でも設定可能なDDC仕様であれば、よりイージーに安全性と快適性を手に入れることが可能だ。
同時に、定評のあったストリートにおける快適装備。
グリッピヒーターやクルーズコントロールはここにも引き継がれる。
スーパーバイクとは市販車最速マシンを競うレースバイクの総称であるが、S1000RRはそのポテンシャルを持ちながら、イージーにライディングを満喫出来る真のスーパーなバイクなのである。