R 12
CUSTOM PROJECT
“BUILDERS”
BMW Motorrad×RISER MagazineによるR 12カスタムプロジェクト。
今回カスタムビルドを手がけるのは、この4人のビルダーだ。
数々のカスタムショーでの受賞経験を持つ名うてのビルダーをはじめ、ハイクオリティなオリジナルパーツを製作するカンパニー、世界的なカスタムショーをオーガナイズする著名ブランド、日本にビーチレースを根付かせたローカルコミュニティまで個性豊かなビルダーたちがBMW MotorradのR 12に自身のアイデンティティを注ぎ込む。
4人のビルダー紹介
Hamans Custom
「60年代コーチビルドの空気をどこか匂わせる仕上がりに」
HAMANS CUSTOM 松本真二
古き良きモーターカルチャーの黄金期たる1960年代に心酔し、往時のコーチビルダーたちが作り上げたカスタムバイクにこそ絶対の美を見出すHAMANS松本真二。それゆえ彼の生み出す造形には四輪カスタムシーンからのインスピレーションやテクニックが色濃く反映されており、それらを巧みに昇華する独自の感性と相まってHAMANSの名を唯一無二たらしめている。旧車専科であるため高年式車両のフルカスタムを手掛けること自体が極めて稀な試みだ。しかし松本は「不安もあるがそれ以上に楽しみの方が大きい」と溢れる意欲を見せる。R12に黄金時代の息吹を投影するという離れ業をいかなる着地でもって我々に披露してくれるのか、期待は尽きない。
カスタムショーに出展すればアワード常勝のHAMANS。こんなにも滑らかな造形が金属で表現できるのかと感嘆を禁じ得ないカスタムは、優れたファブリケーションスキルによる手作業で生み出されている。初対面のR12を前に松本はタンク裏の形状など細かな箇所を確認し、カスタムの道筋をたどり始めていた。
ーHAMANS Customが手がけるR 12のカスタム。その制作過程をご紹介しますー
#Episode 1
#Episode 1
古き良き時代を彷彿とさせるオールドスクールなチョッパーからハイテックなカスタムバイクまでアメリカンカスタムカルチャーの息吹を、卓越したクラフツマンシップで表現してきたHAMANS Cutomの松本。BMW MotorradのR 12カスタムプロジェクトがローンチしてからほどなくして、ベースとなるR 12を受け取った。
製作に移る前に、松本はR 12で300kmのテストライドを敢行。普段はヴィンテージモーターサイクルばかりを題材に車両を製作するとあって、R 12が持つ「走る。曲がる。止まる」という基本的な性能には非常に満足したという。そんな自身のファーストインプレッションを大事にしながら、現在はハンドル周りから製作に着手している。
松本がいまイメージするR 12カスタムはどういったものなのか。そのコンセプトは次回お届けしよう。
#Episode 2
#Episode 2
オールドスクールからモダンまであらゆるスタイルをアメリカンVツインで表現してきた松本。試乗を通じてR 12のモーターサイクルとしての完成度に衝撃を受けたという。普段なら外装などから作業に着手することが多い松本だが、今回はハンドルとステアリング周りから着手しているという。
「じつはカフェレーサーのイメージを持って製作を進めています」とは本人。これまでのHAMMANSのスタイルからすると意外なひとことだった。HAMMANSが作るカフェレーサー、それが一体どんなシルエットになるのか。誰もが想像できない1台となることは間違いない。
#Episode 3
#Episode 3
HAMANS Customのこれまでの作品とは一線を画す“カフェレーサー”の製作に着手したHAMANSのビルダー松本。ほとんどの外装部品を外されたR 12は、いよいよ外装製作の段階に入った。コックピットにはハンドルはトップブリッジに極めて近い位置にマウント。よく見るとライザー加工が施されている。そしてリア周りでは、シートベースやサイドカバーをワンオフで製作。フレームのアウトラインをいかしたファブリケーションが光る。
#Episode 4
#Episode 4
アメリカンVツインのカスタムビルドを得意とするHAMANS Custom松本にとって、初めてのチャレンジとなったR 12カスタムプロジェクト。カフェレーサースタイルを脳裏に描きながら製作を進めるベテランビルダーは、ついにその本丸とも言える外装製作に着手。サイドカバーからシートベース一体型のテールカウル、そしてリアサスの周囲にまで、メタルワークが及んでいる。切り出した鋼板を点づけしてから車体に仮組して、スタイリングを確認しながら微調整……そんな作業を幾度となく繰り返しながら最終的なアウトラインを形作ってゆく。「手を動かしながら、当初描いていたイメージと変わっていくこともあります」とは松本。一瞬のひらめきがここからさらに何を生み出すのか。
MOONEYES
「エンジンの造形を活かしスピードの世界を表現したい」
MOONEYES 田崎勝也
我が国最大にして世界屈指の規模を誇るカスタムの大祭典“YOKOHAMA HOT ROD CUSTOM SHOW”の主催としてその名を轟かせるMOONEYESも此度のプロジェクトの一翼を担う。シーンに深い造詣を持つ同社がR12をビルドする要人として白羽の矢を立てたのが、KATIE'S CUSTOMSの田崎勝也だ。ホットロッドに傾倒する田崎のカスタムはスピードを意識させるフィニッシュながら、誰が見ても「カッコいい」と溜め息を漏らすような端然たる佇まいが特徴。「BMWはやはりボクサーエンジンの造形が独特なのでそれを活かしつつ、MOONEYESとは切っても切れないスピードの世界を表現したい」とプロジェクトに懸けるビジョンを語った。
MOONEYESからはプロジェクトの取りまとめ役としてゼネラルマネージャーの角 正和、モーターサイクルに対する深い知見を活かしたご意見番として前田宏之が直接的に参画する。ホットロッドという共通項をカスタムの原風景に抱く3名のケミストリーは果たしてどう帰結するのだろうか──。
ーMOONEYESが手がけるR 12のカスタム。その制作過程をご紹介しますー
#Episode 1
#Episode 1
二輪から四輪まで多種多様なカスタムショーを開催するなど、日本のカスタムカルチャーを牽引するMOONEYES。R 12カスタムプロジェクトでは、いかにMOONEYESらしさを車体で表現するかを模索していた。製作を担当するKatie’s Customsの田崎は、R 12を受け取ってからさらに自身のイメージを膨らませるべく、何度もスケッチを描いては車体を眺め、自身の中にあるR 12像を作り上げていく。
田崎はすべての外装を取り外したR 12に、針金で外装のアウトラインを形作る作業を続けている。すでにその頭の中には完成図が描かれているようだ。次回は田崎が考えるR 12のイメージについて掘り下げよう。
#Episode 2
#Episode 2
2024年6月、Katie’s Customsの田崎の元を尋ねると、そこにはワイヤーでアウトラインを仮組みしたR 12の姿があった。フロントからシートに至るまで、細いワイヤーが描き出すのは、フルカウルをまとうシルエットだった。クラシックレーサーやストリームライナー(速度記録用のマシン)にも造詣が深い田崎。彼が導き出したMOONEYEらしいイメージとは「スピード感」だった。それを表現すべく、フルカウルの外装を製作、さらにMOONディスクの装着や車体のローダウンを行う予定だという。
#Episode 3
#Episode 3
車体を大きく包み込むようなフェアリングでスピード感を演出すべく製作が進むMOONEYESのR 12カスタム。製作担当のKatie’s 田崎は、中でも大掛かりな作業となる燃料タンクの製作に着手。燃料ポンプの配置を思案しながら鉄板をつなぎ合わせて理想のアウトラインを作りだしていく作業は困難を極めるが、その造形はかなり面白いものになるようだ。
#Episode 4
#Episode 4
スピード感にあふれたフルカウルマシンを製作中のMOONEYES。製作担当のKatie’s田崎はランドスピードレーサーのような地を這うフォルムを描きながら製作を進めている。その肝となるのはもちろん外装だが、足まわりについては前後とも大幅にローダウン。他車種から流用したフロントフォークでライドハイトを下げる手法を選択している。また、燃料タンクについても燃料ポンプを確実に収めつつ、ミニマムなアウトラインを持つベースがすでに完成。いよいよ車体に搭載できる段階となったようだ。
Trijya Custom Motrcycles
「パーツ開発を念頭にした誰にも手の届くカスタムを」
Trijya Custom Motrcycles 岡本佳之
TRIJYA代表の岡本佳之を単にビルダーと表現するのには語弊がある。同社は金属加工を含むカスタムからエンジンワーク、シート製作、CADを用いたパーツ開発に至るまで、多岐に渡る専門職が一堂に会した技能集団であり、岡本は「彼らが仕事をしやすい環境を作る」言わばプロデューサーなのだ。当プロジェクトに際しては、道交法に準じて装着できるアフターパーツの開発を念頭に置いており、つまりTRIJYAがビルドするR12カスタムの完成形はエンドユーザーに向けたデモバイクとなる公算が大きいわけだ。パーツメーカーでもある同社らしいアプローチであると言えるだろう。R12の購入を検討しているオーナー予備軍はその動向に刮目されたし。
TRIJYAはBMWオーナーにも馴染み深いJEKILL & HYDEマフラーの日本総代理店を務めることでも知られる。各部門のプロフェッショナルたちを擁する同社が生み出すカスタムは、綿密な連携により極めて高い完成度を誇る。TRIJYAという技能集団がR12をどのように昇華するのか、今から楽しみでならない。
ーTRIJYA Custom Cyclesが手がけるR 12のカスタム。その制作過程をご紹介しますー
#Episode 1
#Episode 1
アメリカンクルーザー向けのオリジナルパーツ開発のほか、エキゾーストシステムのトップブランドJEKILL & HYDEの日本代理店として日本国内の法規に照らし合わせたカスタムを得意とするTRIJYA Custom Motorcycles。代表の岡本が率いるカスタム製作のスペシャリスト集団は、将来的に発売するR 12用のカスタムパーツの開発を主眼に置きながら、車両製作に取り組んでいる。外装はもちろん、マフラー、ホイールまでCADや3Dスキャニングなど、最先端の設計・計測装置を駆使しながら、どこに手を入れるべきかを吟味するスタッフたち。
すでにR 12はスチールチューブラーフレームとボクサーエンジン、そして最低限の補器類を残した状態にまで分解。各補器類のレイアウトや各パーツの取り付け方法を丹念に確認しながら、パーツ開発が着々と進行中だ。
#Episode 2
#Episode 2
合法的にカスタムを楽しめるパーツを数多くリリースするTRIJYA 。数多くの顧客を抱える同社は、将来的な市販化を念頭にR 12のカスタムに着手していることは前回お伝えした。代表の岡本は、ホイールからサスペンションまで足まわりには大きく手を加えると語る。特にホイールについては、R 12のシルエットやキャラクターを生かしつつ、オリジナル品の製造を模索中だ。
3Dスキャニングなど最新鋭の機材を使いながら、理詰めでマシンを形作っていく。そのプロセスからどんなストリートリーガルが誕生するのか。
#Episode 3
#Episode 3
最新の工作設備を駆使しながらチーム一丸でR 12カスタムの製作を進めるTRIJYA Custom Motorcycle。現在は外装パーツや足まわりの製作など、あらゆる部分でスタッフたちが作業を進める。現在彼らのR 12は、フロントとリアのフェンダー、サイドカバーをワンオフ。R 12のボディラインを崩すことなく、大幅なイメージチェンジを図る。特にサイドカバーからリアフェンダーにかけての多面で構成した独自の造形が見どころだ。こうした外装パーツがどのようなフィニッシュを見せるのか、期待が高まる。
#Episode 4
#Episode 4
R 12カスタムプロジェクトを自社製品のパーツ開発と位置付けつつ、R 12の持つカスタムの可能性を模索するTRUJYA Custom Cycles。リア周りでは大胆なメタルワークを通じてスタンダードとは異なるフォルムを製作中だが、モーターサイクルのアイキャッチとなる燃料タンクについては、R 12のスタンダードタンクをベースにしながら、独自の造形を加える。サイドをカットしつつ、タンクのアウトラインと相似形のようなシートメタルを新造。よく見ると非常に手の込んだ作りである。さらに、オイルクーラー両サイドにはドライカーボンによるウイングレットも装着。さまざまな手法を持ち込みながら、唯一無二のスタイルを構築している。
Chirihama Sandflats
「砂上を疾走するドラッグレーサーのイメージ」
Chirihama 西田/高山/長田/工保
波の打ち寄せる砂浜を舞台に、およそ1/10マイルの直線をフルスロットルで駆けぬける刹那のレース“CHIRIHAMA SANDFLATS”。1969年以前に製造された、いわゆるヴィンテージバイクのみに出走を制限しているため弊誌読者に馴染みは薄いかもしれないが、世界的に注目を集めている一大イベントだ。主催の一角であるHWZN代表の西田靖伸は「普段は古いバイクばかり触っているので一抹の不安もあったが、R12のフレームのデザインを見たときにこれはサンドドラッグレーサー的なカスタムに振れると確信した」と手応えを語る。コンマ数秒を争う砂上の闘争に懸ける男たちが描き上げるR12の錬成とはいかなるものか、完成を心待ちにしたい。
バイクパーツやアパレルを製造販売するHWZNの西田、オールドレーサーに傾倒するカスタムショップWHEELIESの長田 / 高山の両名、そしてモーターカルチャーの文脈に沿ったセレクトショップCANVASの工保の4名がCHIRIHAMAの運営陣だ。いずれも千里浜を擁する北陸のシーンを活気づける名店である。
ーCHIRIHAMA SANDFLATSが手がけるR 12のカスタム。その制作過程をご紹介しますー
#Episode 1
#Episode 1
石川県の千里浜でChirihama Sandflatsを開催する、金沢ローカルのクルーたち。バイカーアパレルやパーツなどを手がけるHWZN.MFG.Co.、地元バイカーたちから絶大な支持を集めるショップWheelies、そして国内外のバイカーアパレルを幅広く取り揃えるCanvas Clothing Storeによるユニオンは、今年の9月に開催する千里浜でのレースを念頭にR 12の製作に着手した。砂浜をハイスピードで駆けぬけるサンドドラッグマシンとして、どう車体を作り込んでいくか。これまで数多くのマシンを製作してレースに持ち込んできた彼らは、BMW R 12という未知の素材に戸惑いを見せながらも、車体のディメンションやパーツのレイアウトを丹念に確認しながら、外装や足まわりの製作を進めている。
#Episode 2
#Episode 2
外装パーツの大半を取り外し、ローリングシャーシとなったR 12を目の前にする千里浜サンドフラッツのメンバーたち。その手元には1枚のスケッチがあった。サイズを極限まで切り詰めた燃料タンクとフレームの真上に座るようなシートカウル……ビーチを疾走するサンドドラッグマシンとして贅肉を削ぎ落としたR 12の姿がそこにあった。
現代のモデルらしく走行を司る様々な補器類をいかしつつ、理想のスタイルの製作に着手した彼ら。現在フロントサスペンションはスペシャル品を製作中だという。
#Episode 3
#Episode 3
日本を代表するビートドラッグレースをオーガナイズするChirihama Sandflats。2024年9月に開催する大会でのデモランも想定に入れる彼らは、サンドドラッグマシンとしてR 12を作り込んでいる。低く地を這うようなフォルムでビーチを駆けぬけるレーサーとして重要なのがディメンション。すでにR 12のリアサスペンションは取り外され、そこにリジッドバーを組み付けて、リアの車高は極限までロワード。この作り込みでどんなシルエットが出来上がるのか楽しみである。
#Episode 4
#Episode 4
サンドフラッツを疾走するビーチドラッグレーサーを念頭にカスタムビルドを続ける千里浜サンドフラッツ。前回、リアサスペンションを取り払い、リジッドバーを追加したことはお伝えした。目指すのは、最低地上高を極限まで下げたレーシングスタイルだ。その肝となるもうひとつのピースがフロントサスペンションだ。その理想を実現するために、現在フロントフォークについてはスペシャリストにオーダー中とのこと。おそらく、R 12のスタイリングを大きく変化させる独自のディメンションを持つものとなるだろう。その姿はもうすぐ明らかに。